一、ぢいさんばあさん(途中から)
一幕目の『ぢいさんばあさん』は、途中から入場することになってしまいました。席に着いたときにはすでに物語が進んでいて、全貌をつかみきれなかったというのが正直なところです。 でも、周りからは鼻を啜る音がちらほら聞こえてきて、感動する内容なんやなあということは十分に伝わってきました。途中からでも、心を動かされる場面がありました。 個人的なお目当ては、上村吉太朗丈と中村鷹之資丈。どちらも好きな歌舞伎俳優さんで、舞台に登場した瞬間から目が釘付けでした。もう「可愛すぎる」のひと言に尽きます。 次は絶対に最初から観たい。幕見券を買って、全部見直したいと思っています。二、男伊達花廓
二幕目は、市川團十郎丈が主役を務める長唄舞踊。格好良くも笑えるお話で、エンターテインメントとして純粋に楽しい演目でした。 客席では團十郎丈の熱烈なファンとおぼしき方々が少し……弾けていて、正直なところ、少し引いてしまいました。でも、それもひとつの楽しみ方なのかな、とも思ったりしています。三、襲名披露 口上
裃姿の俳優さんたちが舞台にずらりと並ぶ、晴れやかな口上。日本人なら一度は耳にしたことのある言い回しがたくさん出てきて、歴史の重みを感じます。 菊五郎丈と團十郎丈は同学年で、同じ学校・同じ稽古場に通われていたというエピソードも披露されました。前回の公演では「ここだけの話」をして場を沸かせたところ、「そぐわない」とご指摘があったそうなのですが、今回もそれに類するお話がしっかりと飛び出していましたよ。気になる方は、ぜひ劇場で(笑)四、連獅子
夜の部の大トリ、『連獅子』。今回はイヤホンガイドを借りての観劇だったのですが、これが大正解でした。有名な毛振りのシーンに至るまでの物語の流れがよりわかりやすくなって、作品への没入感がぐっと深まります。 役者さんの生声を楽しみたい方や、お芝居に没頭したい方はイヤホンガイドを使わないほうが楽しめると思いますが、初心者さんはガイドがあるとひと味違います。それに、イヤホンを耳に入れておくと周りの話し声が多少シャットアウトできる(はず)というおまけ効果も、地味にありがたかったです。 物語の中の親子の姿は、芸の継承の厳しさと深さを映し出しているようで。まさに今この舞台で親子が同時に名を継いでいるという事実と重なって、胸に迫るものがありました。 物語中盤に登場する二人の僧侶のやりとりもおもしろくて、独特の笑い方と息ぴったりの掛け合いに、会場からも笑いが起きていました。——そしてこのお二人、なんと一幕でご夫婦を演じた吉太朗丈と鷹之資丈のペアなんです。こんなところでも光っていて、ニヤニヤが止まりませんでした。 そしてクライマックスの親子毛振り。思わずジーンとしてしまって、拍手が鳴り止まないのも本当に頷けました。歌舞伎にカーテンコールはありませんが、客席も帰るのが惜しい様子で。あの余韻は、何ともいえないものでした。おわりに
今回はU30チケットなどもあって、若い方にももっと歌舞伎や観劇に親しんでほしいなと思います。 そうでなくても、この親子同時襲名というのは本当に貴重な機会。歌舞伎を初めて観る方にも、きっと楽しめる舞台だと思います。観劇の際はマナーを守って、ぜひ歌舞伎の世界に触れてみてくださいね。ほんまに、良いものです。 そういえばこの『連獅子』、8月には長崎のアリーナ歌舞伎でもまた観てきました。長〜い花道での毛振りが圧巻でした……! よかったらこちらもどうぞ→ 長崎“アリーナ歌舞伎”の観劇レポート夜の部の演目|上演時間と配役
途中入場だったので、あらためて夜の部の全演目をまとめておきます。これから観に行く方の参考になれば。
一、ぢいさんばあさん(15:45〜16:55)
森鷗外の短編を宇野信夫が作・演出した新作歌舞伎。旗本・美濃部伊織と妻るんのおしどり夫婦の物語。新菊五郎丈と中村雀右衛門丈がともに初役で伊織・るんを勤めます。
二、男伊達花廓(17:20〜17:50)
吉原仲之町を舞台に、江戸一番の男伊達・御所五郎蔵の粋を描く長唄舞踊。市川團十郎丈が五郎蔵を勤め、傘を使った華やかな立廻りが見どころ。
三、襲名披露 口上(18:10〜18:25)
裃姿の俳優たちがずらりと並ぶ、この公演ならではの晴れやかなひととき。
四、連獅子(18:55〜19:45)
能『石橋』を題材にした松羽目物の大曲。新菊五郎丈が親獅子の精、新菊之助丈が仔獅子の精を勤め、芸の継承が舞台に重なる大トリです。
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