あの夜、博多座でベスは生きてた

2026年4月11日(土)夜の部 ミュージカル『レイディ・ベス』博多座公演


幕が下りてから、しばらく席を立てんかった。

隣の夫を見たら、腕を組んだままじっとしてる。泣いてるわけでもなく、かといってすぐ「さ、行こか」とも言わない。なんか、噛み締めてる感じがした。そういうときの夫は、たいていちゃんとやられてる。

『レイディ・ベス』、4月11日夜の部。夫婦ふたりで観てきました。


博多まで来た甲斐があった

もともとミュージカルにはまったのは私のほうで、夫は最初「ええよ別に、行くけど」くらいのテンションやった。でも今回は博多座での上演が12年ぶりと聞いて、「これ行かんといつ行くねん」と半ば強引に連れ出した。

出発前に夫が「ベスって誰?」と聞いてきたときは正直どうなるかと思ったけど、まあ結果はご覧の通りである。

この日は来場者全員プレゼントの特別日。入場のときに小さな銀袋を手渡された。中身は缶バッジで、14名の出演者のうち誰が入ってるかはお楽しみのランダム配布やった。ふたり分開けてみたら、わたしは石川禅さん、夫は内海啓貴さん。どちらもなかなか格好いいデザインで、ふたりでしばらくしげしげと眺めてからバッグにしまって、席についた。ロビーには衣装でびしっと決めてるファンの方もいて、そういうの見るのも好きやねんな。


幕が開いたら、もう別の世界

物語の冒頭、薄暗い屋敷でひとり本を読むベスが現れた瞬間、客席の空気がすっと変わったんがわかった。

国王の娘やのに、母親を処刑されて、田舎でひっそり暮らしてる少女。その設定だけ聞いたら重たい話やなと思うんやけど、実際の舞台はそんなに暗くない。王女らしいしゃんとした誇りの奥に、やんちゃで好奇心旺盛な「普通の女の子」がちゃんとおって、それがかわいくてしょうがなかった。

吟遊詩人ロビンとの出会いのシーン、夫がどんな顔で観てるか気になって横目でちらっと確認した。表情は変えてないけど、目がちゃんと舞台を追ってる。ええやん、はまってるやん、と内心ほくそ笑んだ。


クンツェ&リーヴァイは本当にずるい

この作品の音楽、何度聴いても「ずるいな」と思う。

メロディーがきれいなのはもちろんやけど、歌詞とメロディーが重なったときの破壊力がおかしい。泣くまいと思っててもあかん。あのクライマックスの場面、気づいたら私の視界がぼやけてた。隣の夫はといえば、微動だにせず舞台を見つめてた。あの集中力、ある意味すごい。

小池修一郎さんの演出も、今回ブラッシュアップされてるだけあって場面の流れがほんまにスムーズで、長い上演時間がまったく気にならんかった。気づいたらもう終盤、みたいな感覚。


ベスが眩しくて、しんどかった

正直に言うと、観てる途中、何度か「しんどいな」と思った。

ベスが怖がって、それでも「逃げない」と決める場面。あそこで毎回やられる。完璧な英雄やなくて、ちゃんと怖くて、ちゃんと弱くて、それでも選ぶ。その「選ぶ」ことの重さが積み重なって、最後にどかんとくる。

終演後、夫が「あの子(ベス)、結局幸せになれたんかな」ってぽつりと言った。ミュージカルの感想がそれかいとは思ったけど、そういう感想が出てくる時点でもう完全にやられてるよな、と思った。


帰り道

博多の夜はまだちょっと肌寒かった。

「なんか食べよか」ってことになって、入った天ぷら屋が、なかなかの手際の悪さやった。待つ、待つ、また待つ。普段やったら「もうええわ」ってなるところやけど、この日はなぜかあんまり気にならんかった。頭の中がまだ博多座にあったんやと思う。ベスのこと、ロビンのこと、あのクライマックスの曲のこと。天ぷらが来るまでの間、気づいたらずっとそんな話をしてた。

夫がこんなにミュージカルの話をするのは珍しくて、それもまた、いい夜やったなあと思う理由のひとつになった。

ちなみにその天ぷら屋には、二度と行かないと思っている。

連れてきてよかった。いや、連れてきてもらってよかった、か。


2026年4月11日 博多座にて夫婦で観劇

公演情報 ミュージカル『レイディ・ベス』博多座公演:4月4日(土)〜13日(月) 次は愛知・御園座にて5月3日(日)〜10日(日)上演予定。

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