ご縁がありまして、ミュージカル『民王(たみおう)』を観てきました。
博多座では3日間だけの短い公演です。しかも、この公演が全国を回ってきたツアーの大千穐楽にあたります。
政治の話です。
そう書くと、少し身構えませんか。
わたし、選挙には毎回行きます。政党も自分なりに調べます。それでも、政治家の話を聞いていると「政治ってよくわからんよね」と思ってしまう。
そのわかりにくさを、このお芝居は描いていました。
※ほぼネタバレなしで書いていますが、終盤の場面にひとつだけふれた箇所があります。そこは「最後の場面について」という見出しで分けていますので、何も知らずに観たい方は読み飛ばしてくださいね。
公演情報
- 公演名:ミュージカル『民王』
- 副題:この親子、国家機密。(ポスター・チラシより)
- 日程:2026年10月17日(土)〜19日(月)/博多座
- 料金:A席14,000円/B席10,000円/C席5,500円(税込)
- 原作:池井戸潤「民王」(文春文庫/角川文庫)
- 脚本:ツバキミチオ
- 音楽:角野隼斗
- 演出:永井 誠
原作の池井戸潤さんは、ミュージカル化にあたって「角野隼斗さんら音楽界の俊英によって紡ぎ出された華やかな楽曲に彩られ、素晴らしい舞台になる予感しかありません」とコメントされています。(文藝春秋より)
配役
- 武藤泰山 … 別所哲也
- 武藤 翔 … 有澤樟太郎
- 村野エリカ … 豊原江理佳
- 南 真衣 … 林 瑠奈(乃木坂46)
- 貝原茂平 … 山崎大輝
- 新田 理 … 上川一哉
- 蔵本志郎 … 福田転球
- 武藤 綾 … 一路真輝
- 城山和彦 … 竹中直人
※出演予定だったアンサンブルの石川 剛さんが体調不良で休演、甲斐祐次さんが代わって出演されています。
(出典:博多座公式サイト/2026年10月時点)
有澤樟太郎さんは、博多座の『レイディ・ベス』でも拝見しました
上演時間
わたしが観たのは、10月18日(日)の夜の部です。3日間公演の真ん中=中日(なかび)のソワレ、ということになります。
劇場の表示塔には、こう出ていました。
- 開場 16:00/開演 17:00/終演 19:55
公式に出ている上演時間は、こうです。
- 昼の部 第一幕 12:00〜13:10(70分)/休憩 30分/第二幕 13:40〜14:55(75分)
- 夜の部 第一幕 17:00〜18:10(70分)/休憩 30分/第二幕 18:40〜19:55(75分)
(出典:博多座公式サイト/2026年10月時点)
休憩が30分あるので、幕間にゆっくりできます。
席のこと|2階席の中央、下手(しもて)寄り
今回は、2階席の中央あたり・下手寄りでした。
とても見やすかったです。
舞台の全体がきれいに収まって、場面の作りがよく分かります。登場人物が多い作品なので、全体を引きで見られるのは、むしろ良かったかもしれません。
2階席の見え方については、こちらに写真つきで書いています
オペラグラス、どこを見るか迷いました
オペラグラスを持っていきました。でも、この作品では少し困りました。
歌っている人、大きく動いている人。どうしてもそこに目が行きます。ところがその後ろや横で、別のキャストさんが面白い動きをしている。寄って見ていると、それを丸ごと見逃すんです。
こんなに強く感じたのは、珍しい気がします。
2階席だったので、引きで見れば全体がきれいに収まります。「全体を見る時間」と「寄って見る時間」を分けたほうがいい作品だと思いました。
置いてけぼりにされる側が、ちゃんと描かれています
あらすじは、公式サイトにこうあります。
就任したばかりの現職総理大臣の武藤泰山と、武藤のドラ息子で大学生の翔の心と身体が、ある日突然入れ替わってしまい…!?
入れ替わりのコメディです。難しい言葉が分からなくても、話は追えます。
総理の体に入った息子の翔は、大学生です。国会の言葉が分かりません。読めない漢字を読み間違える。
ここは笑うところです。実際おかしい。
政治は本当なら、自分たちの生活に寄り添う大事なことのはずです。それなのに、難しい言葉と難しい表現で話されることが多くて、国民のほうが置いてけぼりに感じてしまう。
そういう描写が、この作品にはちゃんとあります。笑わせながら、です。
俳優さん、すごい

この作品、入れ替わるのは泰山と翔だけではありません。
二組の親子が入れ替わります。
もう一組が誰と誰かは書きません。俳優さんは見た目そのままで、中身だけ別人を演じることになります。
入れ替わる前に、「あれ、なんかおかしくない?」という短い場面があって。そこから先は、入れ替わったまま進んでいきます。
これが、もう。
声の出し方、雰囲気、そして表情まで変わるんです。さっきまでと同じ人のはずなのに、別人に見える。
観ながら、こんなことを考えていました。すごいな、表情ってこんなにコントロールできるのか? ……できないの、わたしだけ?
「俳優さんってすごい」を、まるごと味わえます。
そしてもうひとり。新田 理役の、上川一哉さん。
めっちゃいい味を出されてました。出てこられると、場の空気ががらっと変わるんです。「少し」ではありません。
それから、客席のこと。1階の下手側だったでしょうか。手拍子が「ここっ!」というタイミングで湧き上がって、舞台との掛け合いもバッチリで。
ファンの方なんかな。何度も劇場に足を運んではる方なんかな。こちらまで楽しませていただきました。
笑える場面が多いのに、グッとくるところは、しっかり掴まれる
笑いどころが、とにかく多いです。
そのなかで、ふっと真顔になる瞬間が来ます。そこがちゃんと刺さる。
セリフを正確には覚えていないのですが(ごめんなさい)、こんなことを言う場面がありました。
本来、政治っていうのは——人っていうのは、そういうものだろ!
うろ覚えなので、言い回しは違うと思います。それでも、この一言がずっと残っています。
日本国民全員に観てほしい、と思いました。
観ながら、チャップリンの『独裁者』を思い出していました。
1940年の映画です。チャップリンが独裁者と、そっくりな床屋の二役を演じて、床屋が独裁者の替え玉になってしまう。そして最後は、長い演説で終わります。
入れ替わり、一人二役、そして最後に正面から訴えかけてくる。骨格がよく似ています。
というか——政治家の方がこれを観たら、どう思うんでしょうね。
他人のすべてを知る術は、わたしたちにはありませんが……端々を考えさせられるものがありました。
事実は小説よりも奇なり、かもしれへんけど。現実のほうが、ときどきもっと驚かせてくれますからね。
そして最後に、タイトルの意味を受け取りました。
最後の場面について(少しだけ、ふれます)
ここから数行だけ、終盤の場面にふれます。何も知らずに観たい方は、読み飛ばしてくださいね。
終わりに近いところで、主役のふたりが一緒に歌う場面があります。
聴きながら、こんなふうに思いました。民王——国民ひとりひとりが王であるのなら、彼らもまた「王」なのだと。
力強さ、意志の強さ、そしてこの先に希望があると思わせてくれる場面でした。
観終わって、自分も何かひとつでいいから挑戦してみよう。そう思いました。
ひとつだけ、音のことを
数か所ですが、耳鳴りのような高い音が入る場面があります。
わたしは、この音が苦手です。しばらく耳に残りました。
演出として必要な音だと思います。ただ、「そういう場面がある」と先に知っておくだけで、ずいぶん違うはずです。
高い音が苦手な方、音に敏感な方は、少しだけ心づもりを。
幕間のごはん
場内は撮影禁止なので、客席の写真はありません。
幕間は30分あったので、連れと相談して花幸さんの「おにぎり弁当」をいただきました。
大きなおにぎりが2つと、お惣菜。ピクニックに持っていけそうな、小ぶりでおしゃれなお弁当でしたが、しっかりお腹いっぱいになりました。
ほかにも、館内でお買い物を楽しみました。
- バイブリーティールームズさん(Bibury Tea Rooms・客席2階ロビー) … 季節限定の和栗のスコーン(栗づくし)
- 玄氣おむすび ひとむすびさん(客席2階ロビー) … おにぎりと一緒に、栗の和菓子が2種類。「栗の味が濃い」とすすめられたほう(和栗水晶と書かれていました)を選びました
秋ですね。
ひとつ気をつけたいのが、2階の店舗は幕間までの営業だということ。ひとむすびさんで買うときに、そう教えていただきました。
じつはこれまで、「あとで買おう」と思っていると閉まっていることが何度かあって。完売なんかな、人気やしなぁと思っていたんです。
今日は少し空席もあったからか、商品が残っていました。それで「そうか、売り切れていたんじゃなくて、お店の時間だったのか」と、今日になって気づきました。
館内で「まもなく終了します」といった案内が流れるわけでもありません。気になるものがあるなら、幕間のうちにどうぞ。
……とはいえ、季節限定のお菓子が美味しそうで。すすめられるままに、財布の紐が少し緩みました。
博多座の幕間のごはんは、こちらにまとめています
配信があります|10月19日の大千穐楽

カーテンコールで、「明日の分は配信があるのでよろしく!」とおっしゃっていました。
ポスターにも、はっきり出ています。
- ライブ配信/見逃し配信あり
- 配信公演:10月19日(月) 12:00 大千穐楽公演
- 配信はHulu
見逃し配信があるのは心強いです。当日観られなくても、あとから追いつけます。
明日、迷っている方へ
これを書いている時点で、10月19日(月)の昼公演には、まだお席の空きがあります。
明日、予定が空いているけれど迷っている——という方。ぜひ、おすすめさせてください。
最新の残席は博多座公式サイトでご確認くださいね。
※小学生未満のお子様は入場できません。
おわりに
政治は、やっぱり難しいです。
ただ、難しいのは中身ではなく、話され方のほうなんじゃないか。観終わって、そう思いました。
作中に「ねじれ国会」という言葉が出てきます。ニュースで聞いたことのある方も多いと思いますし、いまもそうですね。
当選前はいいことを並べておいて、当選したら——というのも、残念ながら実際にあることです。
この作品に、実在の誰かをモデルにしたという話は聞きません。それでも、日本のいまの現実が重なって見えるところがあるのは事実だと思います。
これをきっかけに、選挙や政治に少しでも関心を持つ方が増えたらいいな。そんなふうにも思いました。
——まあ、本当に国会が歌って踊り出したら、違う意味で釘付けになってしまいますけどね。笑
よく笑ったのに、帰り道ではずっと考えていました。そういうお芝居でした。
原作も読んでみたくなりました
舞台を観たあとだと、文字で読むとどうなっているんだろうと気になります。
原作は、池井戸潤さんの『民王』。2010年の刊行で、文春文庫と角川文庫から出ています。
※価格は2026年10月時点のものです。
– 広告 - この記事にはプロモーション(楽天アフィリエイト)を含みます。

コメント